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1〜12,368円
カバー裏の紹介文に「白眉」と書かれている場合、少なくとも傑作ではないことを出版社側が認めているわけで、読む側もそれなりの覚悟が必要となる。
実際、本書も「山岳小説の白眉」とあるが、傑作には程遠いできである。
「そこに山があるからだ」と、少々意訳されて膾炙している名言で知られる登山家ジョージ・マロリーの生涯を追った一編で、解説でも指摘されているとおり古きよき大英帝国の紳士としてのマロリーを活写したところに意義があり、彼が登山家であったがゆえに山岳小説ともいいうる、というのが本当のところだろう。
したがって数多の山岳小説の足元にも及ばないし、この部分に期待していると肩透かしを食う。作者自身、別に山にこだわりがなさそうなのがまた切ない。
残念ながら作中のエピソードがどこまで本当かについて判断ができないのだが、マロリーや彼の家族、仲間たちがいきいきと魅力的に描かれているのは間違いない。その点は評価できる。
したがって、マロリーというひとや、イギリス紳士なる存在に興味があるひとには、悪くない作品といえるだろう。
★★★☆☆