P・D・ジェイムズ『女の顔を覆え』(ハヤカワ文庫)★★★☆☆ | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

P・D・ジェイムズ『女の顔を覆え』(ハヤカワ文庫)★★★☆☆

 

 

1962年発表のジェイムズの処女作。ダルグリッシュが初めて登場する作品でもある。

 

跡取り息子と婚約したばかりのメイドが殺害されたイギリスの旧家を舞台に、特に派手な展開もなく、聞き込み捜査とともに明らかになっていく人間模様をひたすら読まされる一編。

 

被害者の人物像のほとんどが、証言や回想に依っており、彼女の真の姿が一向にわからないというもやもやした感じが本書の特徴で、逆にいうと、家族にとって侵入者ともいえるメイドをめぐる錯綜した思惑が読みどころとはいえる。

 

しかしミステリ的な妙味には乏しく、さらにダルグリッシュも本当に影が薄い。

 

正直、ジェイムズの処女作という以上の価値はない。

 

★★★☆☆

 

Cover Her Face. 1962