松本則子『父ちゃんのポーが聞こえる―則子・その愛と死』(立風書房) | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

松本則子『父ちゃんのポーが聞こえる―則子・その愛と死』(立風書房)

ハンチントン病に侵され、21歳でこの世を去った作者が残した詩に、父親、教師等のコメントを付したもの。恋愛感情であったり死の予感、ここまで赤裸々な内面をさらけ出すのかという当惑を感じつつ読み耽る。

 

松本 則子

 

私がはいると家の中が
くらくなるような気がしてなりません
要するに私はじゃまものなのです



家で看るには負担が大きすぎると施設に預けることを選択した家族を責めることは決してできないが、こういうことばを読むと暗澹としてしまう。

タイトルは国鉄の機関士だった父親が施設近辺をとおる際に鳴らした汽笛による。家族とのつながりを感じさせはするものの、なんとも裏寂しい。
 

六時二十分
父ちゃんのポーが
なりました

悲しいひびきでした



帯には「感動しました」と映画で作者を演じた吉沢京子のコメントが付されているが、素直に感動するようなものなのか、屈折した思いを抱いて本を閉じざるを得なかった。


そういえば、伝説のアヴァンギャルド・ロックバンド ガセネタが「父ちゃんのポーが聞こえる」(『Sooner or Later』所収)を歌っているが、何か関係あるんでしょうかね。

 

★★★☆☆

それにしても浜野純の極太ギターは本当に気持ちがいい。フリーとかノイズやパンクの好事家は「社会復帰」をぜひ聴いてほしい。