矢吹丈、ベトナム撤退、酒井隆:酒井潮『治外法権 ジャム・イン・横田』 | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

矢吹丈、ベトナム撤退、酒井隆:酒井潮『治外法権 ジャム・イン・横田』

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酒井潮, JAM IN YOKOTA 治外法権(紙ジャケット仕様)

矢吹丈がホセ・メンドーサと命を削る死闘を繰り広げ、ベトナムからは米軍が撤退完了して一週間といった時期に、横田飛行場(横田基地)内NCOクラブ(下士官用クラブ)で行われたライブを収めた実に貴重な一枚。マスターが消失してしまったためにLPをそのままCDにしたようで、スクラッチ音などがそのまま入っているが、そんなもの気にならないほどのとんでもないライブである。

酒井といえばもちろんハモンドオルガンの第一人者だが、オルガンならではのうねりがものすごい。開祖ジミー・スミスのような速度や音数の多さというよりも、音の入れ方と切り方でやえらいグルーヴ感を出しまくっている。白人がよりつかない黒人のつまったクラブにて彼ら顔負けの黒さだ。

若かりし日野の煽り、悠揚たる松本に切迫した村岡のホーンなどサイドも聴きどころに満ちている(ペットとトロンボーンはあまり耳に残ってないんだが)。また初期・川崎燎のライブであるという点も本作の価値を高めている。このライブの直後に渡米、ギル・エヴェンスにスカウトされるんだが、それも当然のつぼを心得たクールな演奏。彼の存在が本ライブの成功の要因であるのは間違いない。

とにかくホルムスだのシャーリー・スコットだのいっている場合ではない。日本に彼ら以上のオルガン奏者がいることを一刻も早く確認すべきだ。

なお酒井潮の父親は、戦後中国で刑死した酒井隆陸軍中将である。

1. Minorkimuchi
2. Blues talk
3. Mrs.Robinson
4. Soul talk
5. Pig's Legs
6. Blues in my soul
7. Georgia on my mind
8. Pepe
酒井潮(org), 川崎燎(g), 伏見哲夫(tp), Teddy Adams(tb), 村岡建(ts), 松本英彦(ts), 日野元彦(ds)
Live at Top5 in Yokota Air Base on April 8, 1973
★★★★☆
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