死体を卑しむということ:バクシーシ山下『セックス障害者たち』(幻冬舎アウトロー文庫) | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

死体を卑しむということ:バクシーシ山下『セックス障害者たち』(幻冬舎アウトロー文庫)



バクシーシ山下
セックス障害者たち』(幻冬舎アウトロー文庫)

V&Rプランニングの作品群に、死を覗き見るがごとき眩暈を感じた人間も多いのではないだろうか。どうしようもなく突きつけられる生の諸相に、わたしはこの風景を知っている、しかし、しかしわたしではない、とその生を否定しつつ、自らも生きるという一点においてそこと接続していること、方向は違えど欲望という一点においてそこに活写される人間たちはわたしであり、わたしではありえないと否定する自己の基底の動揺、この体験は死体を見つめるわたしと似ている。

死体は醜く恐ろしい、生や欲望のあらゆる障害も醜く恐ろしい。それらは普通ではなく異常である。だからこそ「倫理」により検閲される。

しかし死体はいうだろう。













「俺が蛇に見えたお前こそ蛇なんだ」

★★★★☆