宇垣纏はどこに墜落したのか:秦 郁彦『八月十五日の空―日本空軍の最後』 | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

宇垣纏はどこに墜落したのか:秦 郁彦『八月十五日の空―日本空軍の最後』

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秦 郁彦
八月十五日の空―日本空軍の最後』(文春文庫)

昭和20年8月15日の前後二週間、日本各地に点在した陸海軍航空隊の混乱とその様相をまとめたノンフィクション。

しかし各部隊の不穏な空気や、狂熱に駆られた最後の出撃の風景を描くのはよいとして、全体的に秦の筆はノンフィクションには不向きといわざるをえない。ぶつ切りのエピソードを陳列しただけにしか見えないのはいかがなものか。

日本語に若干怪しい点があるのも気になるのだが、作者が存在し執筆をしている現在という地点から敗戦前後の航空隊を書くという観点と、昭和20年の航空隊を再現する、いわば作者の存在を希薄にした描写の双方が混在し、その一貫性のなさが何とも興を殺ぐのだ。

確かに膨大な資料の読み込みと実地調査から、たとえば宇垣纏はどこに墜落したのかを推測してみるなど、面白いところもある。しかしながら完成度が高いノンフィクションとは少々いいがたい。

★★★☆☆