「日本軍の戦果・なし」(太平洋戦争研究会『太平洋戦争・主要戦闘事典』) | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

「日本軍の戦果・なし」(太平洋戦争研究会『太平洋戦争・主要戦闘事典』)



太平洋戦争研究会
太平洋戦争・主要戦闘事典 指揮官・参加部隊から、戦果・損害まで』(PHP文庫)

日中戦争から、敗戦後の南樺太での戦闘データまでを収め、文庫としては驚異的な情報量を誇る一冊。

それぞれの戦闘に戦場、指揮官、参加主要部隊、日本軍の戦果、日本軍の損害といった概要と、さらにほとんどの戦闘データに進軍路、陣地まで記した地図が付され、まさに「事典」として使用に耐えうる質の高さといえる。

陸海軍双方の戦闘を収めてはいるが読みどころは陸軍のそれで、かなりマイナーな戦闘にも地図があるため、──たとえば占守島でのソ連軍との戦闘にまで地図がついているんだからなあ、それまで戦記を読んで戦闘経過や状況を漠然としか把握できていなかったひとは、本書ですっきりすること請け合いである。

しかし敗戦に近づくにつれ「日本の戦果・なし」が急増するあたり、日本軍のジリ貧ぶりを如実にあらわしていて、なんとも切ないものがある。

ひとつだけ難点をいえば陸海軍の戦闘を分けることなく、両者を一緒にした完全な時系列での編集にしてほしかったことくらいだろうか。

★★★★☆